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第94話 前と違う人

作者: 八月 猫
last update 公開日: 2026-08-15 09:00:39

 宮坂さんとの次回打ち合わせは、翌週の午前に決まった。

 交流会の会場の隅で立ったまま、私は手帳に予定を書き込む。

 入力項目の削減。

 家族向け説明文の作成。

 現場スタッフ向けの短い運用メモ。

 今日だけで、やることはいくつも増えた。

 けれど、不思議と重くはなかった。

 何を直せばいいのか分からないまま抱える仕事より、直す場所が見えている仕事の方がずっといい。

「朝比奈さん、今日の話を受けて、うちの現場にも一度簡単に聞いてみます」

 宮坂さんが資料を鞄にしまいながら言った。

「本格的なヒアリングではなく、まずは反応を見る程度ですけど」

「助かります。現場の方が最初に引っかかるところを知りたいので」

「では、その前提で共有します。綺麗に説明されすぎた資料だと、現場は逆に警戒するので」

「……そこも直します」

 思わず真顔で答えると、宮坂さんが少し笑った。

「悪い意味では

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     宮坂さんとの次回打ち合わせは、翌週の午前に決まった。 交流会の会場の隅で立ったまま、私は手帳に予定を書き込む。 入力項目の削減。 家族向け説明文の作成。 現場スタッフ向けの短い運用メモ。 今日だけで、やることはいくつも増えた。 けれど、不思議と重くはなかった。 何を直せばいいのか分からないまま抱える仕事より、直す場所が見えている仕事の方がずっといい。「朝比奈さん、今日の話を受けて、うちの現場にも一度簡単に聞いてみます」 宮坂さんが資料を鞄にしまいながら言った。「本格的なヒアリングではなく、まずは反応を見る程度ですけど」「助かります。現場の方が最初に引っかかるところを知りたいので」「では、その前提で共有します。綺麗に説明されすぎた資料だと、現場は逆に警戒するので」「……そこも直します」 思わず真顔で答えると、宮坂さんが少し笑った。「悪い意味ではありません。朝比奈さんは、ちゃんと聞く気があるでしょう。だから言っています」 その言葉に、胸の奥がじんわり温かくなった。 褒められたというより、仕事相手として一歩近づけた気がした。「ありがとうございます。次回までに、今日いただいた意見を反映しておきます」「期待しています」 宮坂さんはそう言って、別の参加者に挨拶へ向かった。 私は手元の資料を見下ろす。 赤字とメモでいっぱいになった紙。 完成にはほど遠い。 けれど、前よりずっと使えるものになりそうだった。「朝比奈さん」 呼ばれて顔を上げると、紗雪さんが近くに立っていた。 いつの間に来たのだろう。 足音も気配も、驚くほど静かだった。「先ほどは失礼いたしました。少し踏み込んだ質問でしたわね」「いえ。必要なご指摘でした」「そう言っていただけるなら安心しました」 紗雪さんは柔らか

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